2025.07.04 ビジネススーツ
スーツに使われる素材には、大きく分けて天然素材と化学繊維があります。天然素材、特にウール・コットン・リネン・カシミアなどは、使い込むことで風合いが増し、着る人の体型やライフスタイルに沿って変化していきます。一方で化学繊維は、耐久性や防シワ性には優れているものの、経年による“育ち”はあまり期待できません。素材選びが「長く付き合えるスーツ」を実現する鍵となります。
シーズン別おすすめ素材まとめ春夏はコットンやリネンなど通気性に優れた素材が主役です。これらはシワになりやすい反面、そのシワが味となり、着用を重ねるごとに「こなれ感」が生まれます。一方、秋冬にはツイードやフランネル、カシミアなどの厚みと温かみのある素材が向いています。特にツイードやフランネルは“着込むほどに体になじみ、表情が深くなる”という魅力があります。
コットン素材は色落ちやアタリが出やすく、ジーンズのような経年変化を楽しめる点が魅力です。リネンはシワが出やすいものの、それ自体が“味わい”となり、ナチュラルな大人の雰囲気を演出してくれます。ハリスツイードやFOX BROTHERSのような名門ツイード生地は、最初は硬く感じても、着るたびに自分の形に馴染んでくる過程が実に味わい深く、育てがいのある素材です。
カシミアやヴィキューナといった超高級素材は、その柔らかさと軽さが魅力ですが、繊細さゆえにケアには注意が必要です。また、ウールでも「梳毛(そもう)・紡毛(ぼうもう)」や「平織・綾織」といった織り方の違いによって、光沢感や経年変化の表情が変わります。特に紡毛系は暖かさだけでなく、ヴィンテージ感のある風合いに変化するため、育てる楽しさがあります。
ポリエステルなどとの混紡素材は、日常使いでシワになりにくく、乾きやすいという実用性の高さが魅力です。ただし、経年変化という点では天然素材に劣ります。スーツを「見た目重視」で選ぶなら問題ありませんが、「自分と一緒に時間を刻む」ようなスーツを求めるなら、混紡率が低めの素材(ウール90%以上など)を選ぶのがおすすめです。
スーツの寿命は、着用頻度や素材によっても異なりますが、一般的には3〜5年がひとつの目安です。経年変化を楽しむには、日々のケアが欠かせません。ブラッシングや蒸気を使ったシワ伸ばし、定期的なクリーニングはもちろん、同じスーツを連続で着ない「休息日」を設けることも重要です。正しいケアをすることで、スーツの“味”を引き出しながら、長く楽しむことができます。
スーツは消耗品ではなく、手をかけて“育てていく”ものです。特に天然素材を選ぶことで、経年変化という楽しみが加わります。毎日の手入れを怠らず、自分の体に馴染んでいく過程を楽しみながら、長く付き合える一着を見つけてみてください。